【研究】SDG9、14、15を横断的に実現する農業技術として国際的に注目される「水田養殖」に関する原特任助教の解説記事が日本地理学会の電子ジャーナルに掲載されました
中国における水田養殖業および水田養殖研究の展開と課題
E-Journal GEO, 2021年, 16巻1号, pp. 70-86
[DOI] https://doi.org/10.4157/ejgeo.16.70
抄録
中国では,環境汚染,内陸水産養殖業の急速な発展にともなう水田環境の喪失,農村部の貧困問題を改善するため,新たな農業のかたちが模索されている.中でも近代的な稲作と水産養殖の統合は,地域経済を発展させつつ水田環境と生態系を保全するための有効な方法の一つとして注目を集めている.一方,多くの地域では,依然として水田養殖の普及率は低い.その要因として,野生種の生息域内外ではその動物の養殖業の競争力に地域差があること,養殖動物の消費需要の地域的偏りと生育に必要な気候環境が制約条件になっていること,都市部の消費者の間で,水田養殖に関する生態学的なメリットやブランドの認知が広がっておらず,付加価値の創出に課題を抱えていること等が挙げられる.加えて,今後の課題として,養殖に導入された種による陸水域生態系への影響と,食の嗜好変化によって伝統的な方法を維持する中国西南地域へ近代的な水田養殖が無秩序に拡大すること等も懸念される.
中国北部の各地で販売される「蟹田米」(水田モクズガニ養殖によって減農薬・減化学肥料で栽培・収穫されたウルチ米)のパッケージ例(本論文より転載)
(原特任助教が、河北省張家口市、寧夏回族自治区銀川市、陝西省延安市、同省咸陽市にて、2015~2019年にそれぞれ撮影)